【アクアリウム】PH測定から水槽の状態がわかること

2023年7月14日

水草水槽に適したPH値やPHが下がる、PHが上がる原因について紹介します。さらにPHメーター、試薬液、試験紙の3つの測定方法はどれが使いやすいか紹介します。PHは熱帯魚、水草に適した水質の確認だけではなくコケの発生や熱帯魚の病気への影響を確認できます。この記事をご覧いただくことで、PHの理解が深められアクアリウムの水質管理に役立てることができます。

1.PH測定からわかること

PHは0~14の範囲の値から、酸性は0~6中性は7、アルカリ性は8~14を表します。水草水槽ではPH6.5~7.3の弱酸性から中性を好む水草や熱帯魚が多いです。水槽のPHを測定することで次のことがわかります。水槽が汚れている場合はPHは弱酸性に傾きやすいです。PH6.5以下の場合はコケの原因の栄養分が蓄積していることが多いです。また過剰な栄養分の蓄積によるPHの酸性化や変化は熱帯魚にストレスを与え病気の発生の原因になることがあります。PHを下げる栄養分の発生の原因は2つあります。一つ目は餌の量に比例して魚からでる糞が分解され栄養分になり、その栄養分が蓄積することでPHが下がります。二つ目はソイルから発生する汚れが分解されて栄養分になる場合とソイル自体から発生する栄養分が原因でPHを下げます。またソイルの製品によっては腐植酸(水が茶色なる場合がある)によりPHが下がる場合もあります。ソイルの場合は、栄養分を水替えにより1~2ヵ月過ぎると栄養分は除去でき、PHは中性に傾きやすいです。CO2添加をしてもPHは下がりますが、水草が多く茂り光合成による酸素の放出が確認できるような水槽ではPH6.8~7.3前後の中性に傾きます。PH7.5以上になる水槽では、PHを上げるカルシウム分やマグネシウム分を含んだ石、砂利などが原因でPHが上昇する場合があります。また水槽内にエアレーションなど酸素を供給している場合はPHは弱アルカリ性に傾きやすいです。

PH測定からわかること

2.水槽のPHの推移

それでは水草がよく育っている2本の水槽のPHの推移を見ていきましょう。

硬度が高め・弱アルカリ性の45cm水槽

1本目の水槽は45cmキューブ(92L)です。水替えは週に2回(15L×2)の水道水で水替えをしているKHが3.5°dHで、やや硬度の高い水槽です。底床はソイルですが、石を積んで水槽に高さを付けています。約1年半経過した水槽です。水道水を使った水替えで管理しています。PHの推移は照明の点灯直前から2時間おきに測定しています。
照明の点灯時にCO2も添加されています。照明が点灯する直前はPH6.91と一日で一番低くい値です。PHは時間の経過とともに徐々に上がっていきます。十分な光量とCO2添加は光合成を促進し、栄養分とCO2を吸収しPHの降下を抑え、光合成の酸素によりPHは上昇しやすくなります。十分な光量とCO2添加は光合成を促進し、PHを下げる栄養分とCO2を光合成で吸収し、さらに放出した酸素によりPHは上昇しやすくなります。CO2添加によるPH低下より、水草にCO2が吸収され光合成による酸素の放出によりPHは上昇していきます。点灯2時間後の測定後に餌を与えています。点灯6時間後の測定後に水替えを行っています。92Lの水槽に15Lの水替えを行っています。点灯8時間後がPH7.34と一番高い値になっています。点灯8時間後に照明とCO2は電源がオフになります。

硬度が高め・弱アルカリ性の45cm水槽のPHの推移

硬度が低い・弱酸性の60cm水槽

2本目の水槽は60cmワイド(121L)です。水替えは週に2回(30L×2)のRO水で調整した水で管理している水槽のKHは1.5°dHの軟水を維持した水槽です。底床は富士砂と石を使っていますが、RO水で水草が育てやすい軟水に維持している為、PHは低く保ちやすい水槽です。60cm水槽も点灯する直前はPH6.74と一日で一番低くい値です。点灯2時間後の測定後に餌を与えています。(測定した日には60cm水槽の水替えはしていません。)点灯8時間後がPH7.17が一番高い値になっています。

硬度が低い・弱酸性の60cm水槽のPHの推移

3.おすすめのPHの測定方法は?

PHの測定はPHメーター、試薬液、試験紙で測定できます。各測定方法の特徴と測定の違いを紹介していきます。

おすすめのPHの測定方法は?

PHメーター ★★★★☆

PHメーターはデジタルで、結果が数値でわかりPHの値が把握しやすい測定方法です。PHメーターは消耗品です。また定期的に校正が必要です。今回使っている製品は1,500円程度の格安PHメーターです。測定値が怪しい時は水道水を測定して確認してから使います。確認した測定値がおかしい時や長期間使っていないときは校正します。PHメーターで測定した45cm水槽と60cm水槽のグラフです。微妙なPHの変化も確認でき、推移を測定するには適しています。アクアリウムにおすすめのPHメーターはこちらの記事を合わせてご覧ください。

試薬液 ★★★☆☆

試薬液は試験管の色を比色紙と比較してPHの値を測定する方法です。PHメーターほど分かりやすくありませんが簡単にチェックできることからアクアリウムではよく使われる測定方法です。テトラ社の説明では試薬液(テトラテスト ペーハートロピカル)の使用期限は4~5年間使えるそうです。しかし開封から1年以上経過すると徐々に反応が悪くなる傾向があります。試薬液で測定した45cm水槽と60cm水槽のグラフです。2本の水槽の微妙なPHの違いや、変動がわかる結果です。テトラテストPHトロピカル試薬の使い方や価格はこちらの記事をご覧ください。

試験紙 ★★☆☆☆

試験紙はPHの測定として一番簡単な方法です。測定する水に1分間浸して、比色紙と比べて測定します。試験紙はPHメーターや試薬液と比べて微妙なPHの判定が難しくPHの差が小さい水質の比較には向いていません。テトラテスト 試験紙pHの使用期限も開封から4~5年は使用できるようです。開封から1年以上経過すると変色したり反応が鈍くなる傾向があります。

3つの測定結果の違い

今回の測定には、試薬液、試験紙は新品のものを使って測定しています。PHメーターも校正してから測定しています。

PHメーターと試薬液の違い

PHメーター、試薬液、試験紙の測定結果の違いをグラフにしました。グラフは45cm水槽のPHの推移です。KHが3.5°dHの水槽です。中性付近の判定はPHメーターと試薬液は、ほぼ同じ結果になりました。試薬液はPHメーターと比べて弱酸性値が低い値を指す傾向があります。

PHメーターと試薬液の違い 3つの測定結果の違い

試験紙の違い

次のグラフは60cm水槽のPHの推移です。KHが1.5°dHの水槽です。試験紙は、他の2つの測定方法と比べて低いPH値になりました。水草水槽の低い硬度だと、弱酸性の値を示しやすい印象です。

試験紙の違い 3つの測定結果の違い

4.PHの下げ方

日本の水道水はPH7前後に調整されています。水草水槽のPHの調整方法は、KH(炭酸塩硬度)を3°dH以下になるように調整すると水草が育ちやすいPHに調整できます。PH・KHを下げる方法を紹介します。

PHの下げ方

ソイルを使う

底床にソイルを使うことで、水道水のPH・KHを下げることができます。しかし水替えによって1~2か月を過ぎると徐々にPH・KHは上がってきます。

薬品を使う

テトラPH/KHマイナスを使ってPH・KHを一時的に下げることができます。しかし持続的にPH・KHを下げ続けることは難しいです。

ピートを使う

ピートやマジックリーフによってPHを下げることができます。この方法は水槽の水が黄ばんだり、着色することがあります。

イオン交換樹脂を使う

ADAのソフナイザーのようなイオン交換樹脂を使ってPH・KHを下げる方法もあります。

RO浄水器を使う

RO浄水器は、水道水から純水(RO水)を精製できます。精製した水と水道水を調整して、水槽に合わせたPH・KHに調整できます。

5.まとめ

まとめ
PHは栄養分の蓄積により弱酸性に傾く

PH6.5以下の場合はコケの原因となる栄養分(硝酸塩)が多く蓄積している可能性があります。栄養分の蓄積によりPHが低い場合はデリケートな生体は病気や死因の原因になりやすく、水替えの頻度を増やす必要があります。

石や砂利は弱アルカリ性に傾きやすい

PH7.5以上の弱アルカリ性に傾きやすい水槽は硬度が高くなるカルシウム分などが原因でPHが上昇する場合があります。カルシウム分などを含んだ石や砂利は水槽から取り除くかまたはPHやKHの水質に合わせた水草の種類を選ぶとよいです。

水草が育てやすいPHは6.5~7.3が適している

水草育成のPH調整は炭酸塩硬度KH3°dH以下にすることが大切です。ソイルの栄養分が抜けて1~2ヵ月後の硬度のKHが1~2°dH前後でPHは6.5~7.3になるようなCO2添加が理想です。

PHの測定は校正されたPHメーターが扱いやすい

PHの測定方法は、PHメーターが測定しやすいです。安価で気軽に測定できる試薬液のタイプも使いやすいです。

この記事は「水草の種類に適した水質を知ろう」の炭酸塩硬度・KHの編と合わせてご覧いただくとより理解が深められます。

compostあわせて読みたい水草育成に役立つ記事6選

水草が育たない・枯れる原因など綺麗な水草水槽づくりに役立つ記事6選