世界最高峰のアクアリウム~プロの技術を見て学ぶ~
プロが制作した11作品のスケールあるネイチャーアクアリウムを紹介します。ADA社主催のネイチャーアクアリウム展(NATURE AQUARIUM EXHIBITION 2021 TOKYO)のレイアウト水槽で使っている水草や熱帯魚、さらには作成者のコメントと合わせてご覧ください。目に留まった21種類の熱帯魚の紹介はこちらの記事も合わせてお楽しみください。
1.モスとヘアーグラスを使った緑が美しいレイアウト例 ~春を謳う~
雪深く長いモノクロームの世界が終わりを告げると、新潟の山肌は一気に春めき色とりどりの新緑が美しい景色をつくり上げる。そんな春の新緑の山肌をモチーフに、さまざまな有茎草を配植した。山々で見かける樹木の群生美と、その中に点在する他の木々の美しいコントラストなど、フィールドに出てこそ気づく自然の表情は実に多い。そんな小さな発見が、この水景の表現に生かされている。
水槽サイズ
水槽キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
水草
魚種
- ダイヤモンド・テトラ
- ファラガ・テトラ
- レッド・テトラ
- ミクロゲオファーグス・ラミレジィ
2.エキノドルスを使った迫力あるレイアウト例 ~エキノドルス・パラダイス~
多くの熱帯魚や水草の故郷である南米アマゾンは、アクアリストにとって憧れの地であり、広大な熱帯雨林から緑の魔境とも呼ばれる。そんなアマゾンを代表する水草であるエキノドルスの群生と、同じくアマゾンを代表する熱帯魚、エンゼル・フィッシュやカージナル・テトラを泳がせた熱帯のパラダイスを夢見た。いつかは憧れのアマゾンに赴き、感動をそのまま表現した水景を制作してみたい。
水槽サイズ
水槽キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
水草
- エキノドルス・アルゼンチネンシス
- エキノドルス・ジョーヨレッドスター
- エキノドルス・マヨール
- エキノドルス・グリーンフレーム
- エキノドルス・オパクス
魚種
- エンゼル・フィッシュ
- カージナル・テトラ
- ハイフェソブリコン・スレンダーコペランディ
- アピストグラマ・ユルエンシス
- アピストグラマ・アガシジィ
3.成長の遅い陰性水草を使ったレイアウト例 ~パーフェクト・レインボー~
自分の好きな水草を集めて、それぞれの水草の個性を生かすように配植することを優先し、細かなレイアウト構成はあえて気にしなかった。初めは散漫な印象であったが制作から1年以上が経過した現時点では、水景に自然なまとまりが備わってきたように思える。水草たち自らの生長によって形成された景観には、人為的な管理だけでは表現できない自然感が生まれる。これもまたネイチャーアクアリウムの醍醐味と言えるだろう。
水槽サイズ
水槽キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
水草
- コブラグラス
- ジャイアントサジタリア
- エイクホルニア・アズレア
- ルドウィジアスファエロカルパ
魚種
4.ライトグリーンの色彩にこだわったレイアウト例 ~グリーン・ヘブン~
暗闇の中、無数のきらめく光を追っていくと、そこには浮遊感のある幻想的な水中の森が広がっていた。そんなストーリーを思い描いて制作した水景。観賞時にはライトグリーンの丸葉がふわふわと漂う水草の印象が強いと思うが、後で思い出そうとしたときに明確な形として思い出せないような曖昧な印象表現を狙った。キラキラと輝くネオン・テトラが幻想的な世界を彩り、ファンタジーの世界に誘っているかのようにも見える。
水槽サイズ
水槽 キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
水草
魚種
5.繊細な色彩の表現が美しいレイアウト例 ~水の中の紅葉~
赤を基調とした多彩な有茎草を植栽し、屏風絵のようにパノラマ比率で構図骨格を組んだ。その多種多様な有茎草が美しい群生を形成すると、錦繍の紅葉のごとく華麗な、まさに「生きた紅葉屏風」といった狙い通りの表現となった。また、手前の流木に苔やシダを多く活着させることでしっとりと落ち着いた趣が生まれ、その深緑色の補色効果によって赤の色彩がより際立っている。
水槽サイズ
水槽キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
水草
- ミクロソラム・ナローリーフ
- ボルビティス・ヒュデロッティ(ボルビティス ヒュディロティ)
- オレンジ・ミリオフィラム
- スーパーレッド・ルドウィジア
- ルドウィジア・グランデュローサ
魚種
- ラスボラ・ヘテロモルファ
- チェリーバルブ
- シザーステール・ラスボラ
6.流木と石を使っ爽やかさを感じるレイアウト例 ~風薫る水辺~
この水景では、細く美しい線の流木をダイナミックに使い、テープ状の水草の群落を点在させることで清々しさを表現している。流木の造形美が消えてしまわないように、テープ状の水草は線の細いソーシャルフェザーダスターを選択した。また、タデ科の水草を合わせて使うことで、和の趣を加えている。清々しい水草の群落の間を魚たちが気持ち良さげに泳ぐ様子は、日本の初夏の水辺を連想させる。
水槽サイズ
水槽 キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
水草
- ソーシャルフェザーダスター
- ホソバノウナギツカミ
- ポリゴナムsp. “ピンク”
- エレオカリス・ビビパラ
- ジャイアントサジタリア
魚種
7.ヘアーグラスを使った石組みレイアウト例 ~初夏の石景~
天野 尚の真骨頂でもあった石組レイアウトの世界は奥が深く、特に川石は形がシンプルなだけに配石が難しい。配石は水の流れを意識することが大切だが、考え過ぎると作為的な配石になりやすく、石に勢いがなくなってしまう。「一気呵成に石を組むことにより、自然の流れや勢いが石に転ずる」というのが、天野の教えでもあった。石と語り、寄り添い、石が持つパワーを感じながら、何とか納得のいく作品に仕上がった。
水槽サイズ
キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
水草
- グロッソスティグマ
- エキノドルス・テネルス
- ヘアーグラス
- エレオカリス・ビビパラ
魚種
8.グロッソスティグマを使った石組みレイアウト例 ~支え岩~
岩礁帯で見られる立岩や洞穴をイメージして制作した水景。石の質感や形状を見極め、2つの石が寄り添うようにしっかりと一つに組み、遠近感が生まれるよう3群に分けて配石した。水草が生えそろった中で、石が互いに寄り掛かり支え合っている様子には安定感があり、この水景ならではの表現ができたと思う。そんな石の合間を颯爽と泳ぐ魚たちも心地良さそうだ。
水槽サイズ
水槽キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
水草
魚種
9.化粧砂を使ったアジアンチックなレイアウト例 ~棲みか~
東南アジアのジャングル奥地、樹木が折れて流木となり、岩場に流れ着いた。その流木を拠り所に水草が群落を形成し、やがて魚たちが棲みつく。そんなストーリーを思い描きながら制作した水景。個性的な水草をそれぞれの性質に合った場所を選んで植栽しているが、それぞれが棲み分けつつも生存競争を繰り広げている。繁茂した水草と流木の影は魚たちに適度な落ち着きを与え、格好の棲みかができ上がった。
水槽サイズ
水槽 キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
水草
- タイニムファ
- セイロンヌパールグリーン
- ツーテンプル
- ハイグロフィラ・ピンナティフィダ
- ブリクサ・アウベルティ
魚種
- プンティウス・ナラヤニ
- ラスボラ・ソムフォングシー
- ピグミーグラミー
- ブラック・タイガーダリオ
10.ジャングルに迷い込んだ世界が広がるレイアウト ~水辺を巡る~
「地球規模で巡る水、それはまるで旅をしているかのよう。ときに雲から雨となり大地に降り注ぎ、霧となり森を包み、川となり海を目指す。その旅路では、さまざまな木々や草花、水草や魚に出会うこともあるだろう。」このネイチャータワー360°は、そんな「水の旅」を一つのテーマとし、降り注ぐ霧やスコール、水の循環はランダム制御としています。8つのセクションからなるレイアウトは、熱帯地域の水辺(エコトーン)をイメージしているため、植生範囲は水中だけでなく、抽水、陸生、樹着生の植物にまで及びます。タワーを周回すると、各セクションで違った植物相の景観が楽しめるほか、葉が数ミリしかないミミカキグサから巨大な葉を広げるタビビトノキまで多種多様な植物を発見しながら観察できるようになっています。
ネイチャータワー360°の特徴
レイアウトは8つのエリアに分けられ、東南アジア、インド、アフリカ、マダガスカル、中南米などの地域をイメージした植栽が施され、それぞれの地域のシンボリックな植物や魚を中心に景観が構成されています。すべて本物の植物を使用しているため、光と水のコントロールが重要となってきますが、光についてはADA製のソーラーRGBをメインとした3種類の照明器具が最適な位置で設置され、植物の生長促進と水の揺らぎ効果が得られるようになっています。また、水分供給については、ADAが独自に考案したミスト・スコールシステムによって自動管理され、霧やスコールの様子は臨場感を高める演出効果としても役立っています。
熱帯雲霧林再現の試み
ADAの水景クリエーターが総力を結集し、ネイチャーアクアリウムを原点とした新たなスタイルに挑んだのが、今回特別展示となるネイチャータワー360°です。世界の熱帯雨林を8つのエリアに分け、それぞれの水辺環境を水上から水中まで感性豊かに表現していますが流れ落ち熱帯植物が生い茂る様子は自然感にあふれ、熱帯雲霧林さながらの眺めが楽しめます。
11.光と霧(ミスト)の演出により苔を美し魅せるパルダリウム ~めぐる生命~
苔の生えた岩や林床の景観が好きだ。そのしっとりとした静かな雰囲気に、独特の趣を感じる。苔は適度に湿り気のある環境でないと生きていけないが、苔の保水力は枯木や倒木を湿らせ、微生物による分解を早めてくれる。膨大な時間の中で樹木は朽ち、苔は樹木の芽生えを育む。そんな森の循環の一部として生きる苔の世界をパルダリウム風に表現してみた。
水槽サイズ
W300×D60×H70(cm)
苔
- シノブゴケ
- ヤクシマユキノシタ
- ビオフィツムsp.
- ベゴニア・クロロスティクタ
- ブレクナム・ギッバム
12.動画
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