黒髭コケの発生の原因と除去方法

黒髭コケ(黒髭苔)は石、流木、砂利、水草の葉、フィルターの排水口などあらゆるところに発生する藻類です。形状は2mm~30mmの髭状で、色は黒、赤茶、茶、灰色など水槽の環境によって変えます。見た目が悪く大量に発生すると見苦しい状態になります。この記事では黒髭コケの発生原因から抑制方法、除去方法(駆除方法)まで、黒髭コケ対策を徹底解説します。(黒髭コケは英語ではblack beard algaeと翻訳されます。略してBBAと言われています。)
1.発生原因
黒髭コケの発生原因は栄養分が継続して水槽内に蓄積した状態が続くことで発生します。黒髭コケを発見したらまず水換え回数が足りない、栄養分が蓄積している水槽と判断できます。次の動画では黒髭ゴケの原因となる栄養分を蓄積させないための水換え方法を解説しています。
コケの原因になる栄養分の発生源
黒髭コケに影響しやすい栄養分の発生源は次の4つのケースが考えられます。
- ソイル(水槽立ち上げ時)
- 餌(窒素・リン)
- 魚(魚からでる排泄物・アンモニア)
- 肥料(窒素・リンが含まれた)
さらに黒髭コケの発生原因の栄養源は、次の2つのケースに注意が必要です。
ソイルで水槽を立ち上げた初期に発生する
ソイルを使って立ち上げた際に、初期の時期に発生する栄養分がコケの発生を誘発します。
ソイルには栄養分となるリンが含まれている製品もあり、水槽に生体がいなくても、栄養系のソイルは立ち上げから1~3ヶ月、吸着系は1~2週間はコケの発生原因になる栄養分が発生することがあります。ソイルの多くは水槽を立ち上げ時に5ppm~15ppm程度の硝酸塩(窒素)が発生することにより、コケが発生しやすくなります。ただしメーカーによって、栄養分の含まれる量が大きく違います。水草の栄養分が多く含まれた、黒髭コケが発生しやすい栄養系のソイルはアクアソイル アマゾニア、JUN マスターソイル ネクストです。栄養分があまり含まれていない吸着系のソイルはプラチナソイル、水草一番サンド、リーフプロソイルです。私はプラチナソイルが扱いやすく使うことが多いです。
魚に与える餌の量に比例して発生する
水槽に熱帯魚を入れてから数日で栄養分が発生します。栄養分は魚に与える餌の量に比例して、糞や汚れがバクテリアによって分解され栄養分になり、栄養分が蓄積した状態が2~4週間継続すると黒髭コケが発生しやすくなります。
2.発生しやすい水槽の特徴
次の5つ中からひとつでも該当するものがあれば、黒髭コケが発生する可能性があります。
- 魚の数が多い・餌の量が多い
- 水換え回数が少ない(週に1回未満)
- 栄養系のソイルを使っている
- 水草が少ない・水草が育たない
- コケ取り生体が入っていない
魚の数が多い・餌の量が多い
魚の数多い水槽や毎日餌を与えている水槽では、慢性的に黒髭コケが発生しやすいです。
栄養系のソイルを使っている
栄養系のソイルの場合栄養分が多く発生するため、魚がいない水槽でも、ソイルの栄養分により立ち上げから1~2ヶ月間は黒髭コケが発生しやすいです。
水換え回数が少ない(週に1回未満)
水換え不足により栄養分が一定の濃度を超え、その状態が2~4週間継続されると黒髭コケが発生しやすくなります。
水草が少ない・水草が育たない
水草が育たない水質や環境では、慢性的に栄養分が蓄積するため、黒髭コケが発生しやすくなります。水草が育たない原因は水草が育たない・枯れる原因を知るの記事を参考にしてください。
コケ取り生体が入っていない
栄養分が蓄積しづらい水草水槽でもコケを食べるエビや魚が入っていない場合、石、流木、器具などにコケが付着しやすくなります。
3.改善方法
黒髭コケの対策は発生原因の栄養分(窒素・リン)を減らし、栄養分が蓄積しづらい環境を作ることが重要です。次の5つの改善方法によって黒髭ゴケが発生しずらい水槽ができます。
- ⅰ.水換え回数・量を増やす水質改善
- ⅱ.餌の与え方を調整する水質改善
- ⅲ.水草の量を増やす環境改善水質改善
- ⅳ.コケ取り生体を入れる環境改善
- ⅴ.光量・照明時間を調整する環境改善
ⅰ.水換え回数・量を増やす水質改善
水槽の水換え不足は、黒髭コケだけではなく、コケ全般の発生を誘発します。水槽の掃除は、底床の汚れをプロホースを使い魚の糞やゴミを除去します。水換えは週2回水槽の3分の1程度の量が目安になります。水換えのタイミングはコケを発生させない為の水換え方法の記事をご覧ください。
ⅱ.餌の与え方を調整する水質改善
水槽の黒髭コケの発生の根源は毎日与えている餌がそのひとつです。餌は一日1回、数分で食べ残しが残らない量を与えます。さらに私は他の餌と比べて黒髭コケの影響が少ないと感じる※テトラ プランクトンを使用しています。※テトラプランクトンを使うことで、黒髭コケが発生しなくなるわけではありません。
ⅲ.水草の量を増やす環境改善水質改善
水槽いっぱいに水草が元気よく育つ水槽では、黒髭コケは発生しづらい水質環境ができます。これは黒髭コケに必要なリン・窒素(硝酸)の栄養分を水草が吸収されるためです。CO2添加していない水槽の場合は、成長の早いCO2添加のいらない水草を植栽したり、水面に浮き草を入れたり少しでも栄養分を吸収できる環境づくりが大事です。
CO2がいらない成長の早い水草
メダカ水槽などやヒーターがない水槽の場合
小型水槽やボトルアクアリウムに扱いやすい浮き草
ⅳ.コケ取り生体を入れる環境改善
熱帯魚を飼育している水槽では、慢性的に黒髭コケが発生しやすい環境ができます。そのため黒髭コケを物理的に除去するために、黒髭コケを好んで食べてくれる生体を入れます。コケを食べてくれるエビや魚は黒髭コケを食べる生体をご覧ください。
ⅴ.光量・照明時間を調整する環境改善
光量の強いLED照明は水草育成に適していますが、あらゆるコケの成長を促進する効果もあります。そのためコケが発生した場合は光量を半分程度まで弱める調整が重要です。点灯時間は6時間程度に調整します。
照明の高さで光量を調整できるLED照明
アプリで光量を調整できるLED照明
4.除去方法
水槽内に発生した見苦しい黒髭コケの除去方法を紹介します。除去方法は器具・石・流木に付着した場合と、水草に付着した場合の2つ除去方法を解説します。
器具・石・流木に付着した場合
器具・石・流木等に付着した場合は、まずは黒髭コケを擦り落とします。ブラシなどでゴシゴシ落としても良いですが、メラミンスポンジを使うと落としやすいです。
手順1黒髭コケを擦り落とす
・器具の場合は水槽から取り出します。水槽から取り出すのが難しい流木や石の場合は、水槽内でメラミンスポンジで擦り落とします。
手順2再発防止のために酢を塗る
・メラミンスポンジに※酢つけて、擦り落とした部分に塗っていきます。2~3分経過したら酢をよく水で洗い流します。※酢は食酢・木酢液・竹酢液などが使えます。また水槽から取り出せない石や流木は、酢は使わずコケ取り生体により再発防止します。器具のように水草に酢を塗ってしまうと葉が枯れてしまうので注意ください。
・綺麗に落とせなかった部分も、酢をつけることによって枯らすことができます。擦り洗いしても付着が残っている部分も酢をつけた部分は次第に枯れエビや魚が食べてくれます。またコケ取り生体がいない場合でも2~3週間すると自然に消滅します。
食酢・木酢液・竹酢液による除去
水中に入れても害の少ない酢を使うことで安全に黒髭コケを枯らすことができます。黒髭コケが付いた器具や流木は水槽から取り出します。器具や流木に食酢、木酢液、竹酢液を黒髭コケが付いているところにスポンジや筆・刷毛を使って塗ります。食酢、木酢液、竹酢液の違いは、私が使って比較する限り、大きな違いはないので、スーパーで売られている一番安い食酢を使っています。酢を塗った器具や流木は、2~3分放置した後に水道水で酢を洗い流します。ヤマトヌマエビが水槽にいる場合は、2~3日で枯れた黒髭コケは完全になくなります。枯れたコケを食べる生体がいない場合は、1~2週間、枯れたままの状態で残りますが徐々に水中に溶け出してなくなります。
酢を使う時の注意
流木に酢を塗るときの注意は、流木に水草を活着させている場合、水草の葉に酢を付けないように気を付けまます。水草の葉に酢がついた場合は、すぐ水道水で酢を洗い流してください。葉に酢がついた場合、写真のように葉が枯れてしまうことがあります。
水草に付着した場合
水草に付着した場合は、トリミングとコケ取り生体によって黒髭コケを除去します。
手順1葉はカットする。
葉に付着したあまりにも見苦しい部分は葉ごとカットします。
手順2再発防止のためにコケ取り生体を入れる。
黒髭コケをよく食べるコケ取り生体はサイアミーズ・フライングフォックスです。小型水槽や中型水槽に入れやすいコケ取り生体はミナミヌマエビやヤマトヌマエビが定番です。
黒髭コケを食べる生体
黒髭コケを食べるコケ取り生体を3種類紹介します。生体による除去効果はコケの発生が抑制されている状態ではじめて効果がでます。黒髭コケが発生し続けている水槽では、コケ取り生体の効果は感じられなかったり、除去できない場合がありますので、必ず生体を入れる前に3.改善方法(対策)を行ってください。
サイアミーズフライングフォックス
コケ取り効果:★★★★★
サイアミーズフライングフォックスは様々なコケを食べてくれます。私の多くの水槽でもサイアミーズフライングフォックスが頑固な黒髭ゴケを食べてくれています。デメリットは大きくなること、またエビを捕食してしまうことです。サイアミーズフライングフォックスはエビより安定したコケ取り効果が期待できます。60cm以上の中型水槽以上におすすめのコケ取り生体です。サイアミーズフライングフォックスは60cm水槽の場合2匹が目安になります。
ヤマトヌマエビ
コケ取り効果:★★★★☆
ヤマトヌマエビはコケ取り生体して定番のエビです。黒髭コケの除去には光量を弱くしつつ、やや多めのヤマトヌマエビを入れることでコケ取り効果が発揮しやすいです。ヤマトヌマエビは60cm水槽の場合20匹が目安になります。デメリットは餌を与えている水槽ではコケ取り効果が鈍りやすくなります。
黒髭ゴケを食べるミナミヌマエビ
コケ取り効果:★★★★☆
ミナミヌマエビは小型水槽やボトルアクアリウムなど小さい水槽のコケ取り生体としておすすめです。デメリットはヤマトヌマエビより小さい為、熱帯魚に捕食されやすいです。水槽内での繁殖も容易なのも魅力です。ミナミヌマエビは60cm水槽の場合20~30匹が目安になります。
5.黒髭コケの種類・形状から水槽をチェックする
黒髭コケの種類・形状によって、水槽内の汚れ具合の目安がわかります。汚れ具合に合わせ水換え回数や量を決めていきます。さらに発生度合を軽度、中度、重度の3つ分けて、水換え量の目安を紹介します。
軽度の場合
黒髭コケの発生が抑えられた軽度は、黒髭コケが石や器具に付着する程度で発生は限定的な状態です。中度との違いは、黒髭コケの髭状の長さが短く、2〜3mm程度の短い長さ、色は白いから灰色、薄い黒色の状態です。軽度の硝酸塩やリン酸塩がほとんど検出されないような水質でも黒髭コケは枯れずにいます。原因はやはり毎日与える熱帯魚の餌やソイル(初期)の栄養分です。水換え頻度を維持していれば、増えることはありませんが、栄養分の蓄積が増えると、抑制されていた黒髭コケが一気に繁殖します。軽度の場合は週に1回の水換えが理想です。
軽度の水質の目安 | |||
---|---|---|---|
リン(PO4) | 硝酸(NO3) | 亜硝酸(NO2) | アンモニア(NH4) |
0.05ppm以下 | 1ppm以下 | 0ppm | 0ppm |
中度の場合
黒髭コケの発生がやや目につく中度は、黒髭コケがフィルターの排水口や給水口、ヒーターやコードなどの器具に発生している状態です。重度との違いは、健康な水草など生きている水草には黒髭コケが付着しない状態です。黒髭コケは枯れかけた葉や石などにつきます。また黒髭コケの色が灰色から黒の薄い状態なのが特徴です。水槽の環境によっては写真のように長く伸びることもあります。黒髭コケの発生度合が中度の場合は、水換えは週に1~2回の水換えが目安になります。
中度の水質の目安 | |||
---|---|---|---|
リン(PO4) | 硝酸(NO3) | 亜硝酸(NO2) | アンモニア(NH4) |
0.05~0.2ppm | 1~2ppm | 0ppm | 0ppm |
重度の場合
黒髭コケの発生が一番ひどい重度は、リセットを考えたくなるような状態で、黒髭コケが水槽全体に蔓延している状態です。黒髭コケは、水草、石、流木に付着して、黒髭コケの色は茶色または黒々した色をしています。さらに黒髭コケの繁殖スピードが速く、水草の新芽や成長の早い水草の葉にも黒髭コケが付着することがあります。重度の場合は栄養分が取り除かれるまで水槽の1/3~1/2の量を3~4回の水換えが必要になります。その後は週2回の頻度の水換えが必要になります。
重度の水質の目安 | |||
---|---|---|---|
リン(PO4) | 硝酸(NO3) | 亜硝酸(NO2) | アンモニア(NH4) |
0.2ppm以上 | 2ppm以上 | 0ppm | ※0ppm~ |
※アンモニアは安定した水草水槽の場合、コケが大量に発生する水槽でも検出した経験はありませんが、熱帯魚が多い水槽やサイズの大きい魚がいる水槽、また水槽立ち上げ初期に検出されることがあります。
黒髭コケの発生しやすい水質とは?
黒髭コケの発生しやすい水質はいリン(PO4)や硝酸(NO3)が検出される栄養分の高い傾向があります。硬度はRO水を使った純粋に近い超軟水から石や砂利を使った硬度の高い水質まで、幅広い水槽に発生します。もちろん水草が育ちやすい軟水は、水草の栄養分(リン・硝酸)の吸収が高くなる為、黒髭コケは抑制されやすいです。ただし水中に栄養分がある場合は軟水(GH1°dH以下、KH0.5°dH以下、TDS30ppm以下)でも黒髭コケは発生します。このように黒髭コケの発生しやすい水質は魚の数、餌の量、光量、水換え回数、水草の量など水槽の環境によって違ってきます。例えば光量が弱い水槽であれば、重度の水質の場合であっても黒髭コケの発生が抑制できたり、中度の水質でもコケ取り生体がいることで発生しない状態を維持できることがあります。今回紹介した水質のデータは発生しやすさの目安になります。
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